ユーザビリティテストの計画をはじめる

ユーザビリティテストの計画をはじめるときに知っておきたいことをまとめました。
テスト設計時の観点は、ユーザビリティテスト設計の観点を参照してください。

ユーザビリティテストを計画する流れ

ユーザビリティテストの実施が決まったら、以下の流れで準備を進めます。

  1. ユーザーリサーチの「目的」を確認する
  2. プロダクトを理解する
  3. 検証内容を具体化する
  4. テストの被験者の条件を検討する
  5. テスト設計をする
  6. テスト環境を用意する
  7. メンバーの役割分担を決める
  8. 被験者のリクルーティング、連絡

1.ユーザビリティテストの「目的」を確認する

ユーザビリティテストはユーザーリサーチ手法の1つです。
最初に「何を明らかにしたいのか」というリサーチの目的を明確にしたうえで、リサーチ手法を選びましょう。壮大な目的を用意する必要はありません。具体的で明快な目標を決めましょう。

ユーザビリティテストで、何を観察するためにどんなシナリオとタスクを用意するかを決める前に、まずはテストの目的を確認します。何を検証しようとしているのかを明示しておくことは、テストを実施するメンバー間の認識を揃えるだけでなく、作成したシナリオやタスクを評価する際の判断基準にもなります。

ポイント

  • 事前にステークホルダーにヒアリングをして、検証したい内容を明らかにする
  • ちょっとした疑問や、開発者が不安視していることを言語化する

例:

2.プロダクトを理解する

ユーザビリティテストの対象となるアプリケーションを理解し、使い勝手を把握しておきます。テストの対象範囲が一部の機能であってもプロダクトの全体像を理解して備えましょう。

PRD(製品要求仕様書)は、開発者が想定しているユーザーストーリーや、その機能によって実現したい状態を把握するのに役に立ちます。必要に応じて参照してください。また、「なぜ、このインターフェースにしたのか」といった開発意図を把握できていると、テストでインターフェースの詳細まで検証できます。

3.検証内容を具体化する

テストで観察したい、被験者の具体的な操作・行動を決めます。1で定めた「目的」を果たせる内容にします。 「一連の流れで操作を見てみたい」「全体的に操作を見てみたい」といった抽象的な操作感の検証を想定している場合は、検証内容が具体的に絞り込めていない状態といえます。

ポイント

  • アプリケーションを操作するうえで、気になるところを洗い出してみる
  • タスクにしたときに、3工程くらいに収まる内容にする

4.テストの被験者の条件を検討する

どんな人がテストの被験者として適任であるかを判断するため、条件をまとめます。
ユーザビリティテストでは、通常、対象のプロダクトを「使っているユーザー」を被験者に選びますが、重要なのは「テストの目的が達成できるか」です。テストの目的次第では、プロダクトや特定の機能を使ったことがないユーザーに協力を依頼する場合もあります。
これらの条件は、被験者のスクリーニング(複数の中から条件に合致する対象を選別する方法)にも役立つので具体的に決めておきます。

ポイント

  • 性別・年齢・役職・プロダクトの使用頻度、パソコンやソフトウェア利用の習熟度などの細かい条件を考える
  • SmartHRのような業務アプリケーションの場合、従事している会社の従業員規模なども意識する

例:

5.テスト設計をする

当日に使用するテストシナリオをはじめとした、スクリプトを用意します。
大きく分けて、テスト実施直前に被験者に対して問いかける簡単な質問「イントロダクション」、被験者がアプリケーションを操作するための仮想の状況設定「シナリオ」、被験者に求める操作を擬似的な仕事として表現した「タスク」を用意します。
このプロセスの詳細は、ユーザビリティテスト設計の観点を参照してください。

6.テスト環境を用意する

開発の進み具合なども加味して、当日に被験者が操作できるテスト環境を実現できる範囲で検討・準備します。 あらかじめ、被験者が操作できる状態をどのように提供するのか、またどのように操作してもらうのかをあらかじめ確認しておきましょう。

できる限り、タスクの実施における障害がない環境になるように、以下の点も意識しましょう。

テスト環境ごとの準備時の注意点

  • ハイファイモックアップ(デザインツール)
    • Figmaなどのデザインツールによるプロトタイプを使う場合、テストの目的が達成できるインタラクションが提供できるか、プロトタイプの画面移動がおかしくなっていないかを確認しましょう。
  • ハイファイモックアップ(HTML)
    • データの保持が難しいので簡易的な表示のみになるケースが多いです。実際の動きをどこまで再現できるかは準備次第なので、モックアップの挙動の正しさを確認しましょう。
  • ステージング環境 / 開発環境
    • プロダクション環境と同様の状態を模した動作確認用の環境を用いるケースです。SmartHRのReviewApps環境のように制限期間が設けられている場合もあるため、テスト実施日まで環境が維持されていることを確認しましょう。
    • 多くの場合、テストが実施できる状態まであらかじめ操作をし、操作用のデータを準備する必要があります。
    • また、複数のテストを連続して実施する場合、直前のテストデータが次の被験者のテストに影響がないように、被験者が変わるごとにデータをリセットする必要もあります。

テスト環境の提供例

  • 被験者のパソコンを使って操作してもらう
    • Zoomの画面共有を使って操作の様子を観察する
  • Zoomのリモートコントロールを用いてファシリテーターのパソコンを操作してもらう
    • ファシリテーターのパソコンは被験者が使用するので、他の操作ができないことに注意してください

7.メンバーの役割分担を決める

円滑にテストを進行するために、あらかじめテスト実施時の役割分担を決めておきます。 円滑な進行は、被験者に安心してテストに臨んでもらう上でも重要です。

ユーザビリティテストに必要な役割

役割説明
テスト設計テスト設計をメインで作成しレビューなどをもらい完成させる。
リクルート(被験者の募集・やりとり)テストに参加してもらえる被験者を集めて、当時までに必要な調整を行なう。
ファシリテーションテストの実施を進める役割。テスト設計者と同じ者が務める。
サポートファシリテーターが気づいていないことをすべてフォローし、テストを円滑に実施できるように務める。
録画あとで気になるところを見返したりして確認するための記録。ファシリテーターが録画を開始する。
議事録テスト終了後にまとめるために残しておく。特定の人ではなく手の空いている人は議事録を取れると良い。
社内周知・配信社内にテストの様子を配信します。必ず必要なわけではありませんが、メインルームの人数を減らしたり、ユーザビリティテストの社内周知に効果があります。

8.被験者のリクルーティング、連絡

テストの被験者の条件を検討するの条件を元に被験者にテストに参加してもらえるかを打診します。 協力してもらえる被験者が、条件に合致しているかを確認するスクリーニングを行ないます。テストに参加可能な日程調整ができたら参加決定となります。

被験者は、社内外に限らずテストのために時間を捻出しています。被験者の状況を十分配慮して、丁寧な連絡を心がけましょう。

ポイント

  • 事前連絡
    • ユーザビリティテストの被験者になったらを参照してもらい、当時のイメージを持つことで安心して参加できる状態を作ります。 また、スムーズに参加してもらうためにzoomのURLや時間も合わせて連絡しておきましょう。
  • 当日連絡
    • 「ユーザビリティテストの被験者になったら」の中から当日もスムーズに参加してもらうために必要な準備と段取りを再度お伝えしましょう。
  • 事後連絡
    • 開発に協力できたことを被験者に実感してもらいたいので、具体的に参考になった部分や開発に活かせる部分があった旨をお礼とともに伝えしましょう。

ユーザビリティテスト計画書

ユーザビリティテストの準備を効率的に進められるテンプレートです。 上から順番に埋めていくことで、考えやすい順番で準備を終えられるように並べていますが、必ずしもこの順番に考える必要はありません。

ユーザビリティテストのテンプレート